行政書士・富樫眞一事務所|横浜市で廃棄物処理業許可の取得なら旭区にある
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広域認定制度とはどのような制度?
メリットと活用の流れについて解説
廃棄物処理法には「広域認定制度」という特例制度があります。この記事では広域特例制度の内容をはじめ、制度利用の流れやメリット、注意点について解説します。
広域認定制度は、廃棄物処理法の特例措置として平成15年に創設されました。まずはその内容と、対象となる事業者や廃棄物の条件をみていきましょう。
広域認定制度とは「製造事業者等が廃棄物の処理を広域的に行うことを環境大臣が認定することで、廃棄物処理に関する地方公共団体毎の許可を不要にする」制度です。
本来、廃棄物の収集運搬や処分を業として行うには都道府県知事や政令市(政令指定都市と中核市)の許可が必要です。しかし環境大臣の広域認定を受けた製造事業者は、行政の許可を受けることなく自社製品を収集し、処分できます。
広域認定制度の目的は「拡大生産者責任に則り、製造事業者等自身が自社の製品の再生又は処理の行程に関与することで、効率的な再生利用等を推進するとともに、再生又は処理しやすい製品設計への反映を進め、ひいては廃棄物の適正な処理を確保すること」です(環境省「広域認定制度申請の手引き」より引用)。
簡単にいうと、「リサイクルの推進」と「リサイクルしやすい製品の普及」を通して「廃棄物を適正に処理する」ことが広域認定制度の狙いということです。
広域認定制度の対象者は「製造事業者」、つまり製品の製造や加工を主として行う事業者や、それらの製造事業者で構成される法人などです。ただしOEM製品や輸入製品の販売のみを行っている(製造をしていない)事業者でも、「再生又は処理しやすい製品設計」に関与できる立場にあるのであれば制度の対象となります。
広域認定制度の対象となる廃棄物は、認定を受けた製造事業者が製造した製品であることが大前提です。そのうえで、以下に当てはまるものが対象となります。
産業廃棄物(以下の両方に該当するもの)
① | 通常の運搬状況の下で容易に腐敗し、又は揮発する等その性状が変化することによって生活環境の保全上支障が生ずるおそれがないもの |
② | 製品が廃棄物となったものであって、当該廃棄物の処理を当該製品の製造、加工又は販売の事業を行う者が行うことにより、当該廃棄物の減量その他その適正な処理が確保されるもの |
① | 廃スプリングマットレス | スプリングマットレスやその部品・附属品が一般廃棄物となったもの |
② | 廃パーソナルコンピュータ | パーソナルコンピュータやその部品・附属品が一般廃棄物となったもの |
③ | 廃密閉型蓄電池 | 密閉型鉛蓄電池、密閉型アルカリ蓄電池又はリチウム蓄電池が一般廃棄物となったもの |
④ | 廃開放型鉛蓄電池 | 開放型鉛蓄電池が一般廃棄物となったもの |
⑤ | 廃二輪自動車 | 法令に定められた原動機付自転車や小型自動車(二輪自動車に限る)、軽自動車(二輪自動車に限る)が一般廃棄物となったもの |
⑥ | 廃FRP船 | FRPを使用した船舶が一般廃棄物となったもの |
⑦ | 廃消火器 | 法令に定められた消火器やその部品・附属品、消火薬剤が一般廃棄物となったもの |
⑧ | 廃火薬類 | 法令に定められた火薬類が一般廃棄物となったもの |
⑨ | 廃印刷機 | 印刷機やその部品・付属品が一般廃棄物となったもの |
⑩ | 廃携帯電話用装置 | 携帯電話用装置やその部品・付属品が一般廃棄物となったもの |
⑪ | 廃乳母車 | 乳母車やその部品・付属品が一般廃棄物となったもの |
⑫ | 廃乳幼児用ベッド | 乳幼児用ベッドやその部品・付属品が一般廃棄物となったもの |
⑬ | 廃幼児用補助装置 | 法令に定められた幼児用補助装置やその部品・付属品が一般廃棄物となったもの |
⑭ | 加熱式たばこの廃喫煙用具 | 加熱式たばこの喫煙用具やその部品・附属品が一般廃棄物となったもの |
広域認定制度を活用するには、認定基準を満たしたうえで最寄りの環境省地方環境事務所に相談・申請を行う必要があります。
広域認定の基準は次の通りです。
(参考:環境省『広域認定制度の概要』)
具体的な申請手続きの前に、まずは最寄りの環境省地方環境事務所に相談して自社の計画が制度に適しているかどうかを判断してもらいます。
①で「問題ない」と判断されたら、計画をより具体的にしたうえで申請書類を作成します。
②で作成した申請書類を環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課(産業廃棄物)と環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課(一般廃棄物)で確認してもらいます。
③の確認が終わったら、申請書類を環境省の担当窓口に提出します。なお審査の際は、現地調査が行われることもあります。審査期間はおおむね3か月程度です。
④の審査が完了したら環境大臣名の認定証が交付されます。なお認定証には「1 認定の年月日」「2 認定番号」「3 産業廃棄物の種類」「4 処理を行う区域」が記載されます。
広域認定制度は「製造事業者(メーカー)」と「排出業者(ユーザー)」の双方にメリットがある制度です。
広域認定を受けたメーカーの製品は、特に「廃棄処分の手間を軽減したい」と考えているユーザーにとって魅力です。これが競合他社の製品との差別化になり、大きなアドバンテージになることも少なくありません。
ユーザーから回収した製品の中には、新規に製造するよりも低コストで再生できるものもあります。また回収した製品から利用できるパーツを取り出すことで、原材料費を抑えることも可能です。
自社製品を自ら回収することで、自社製品が悪質な処理業者によって不法投棄されたり、不適正な処理を行われる可能性を減らせます。そうすることで自社のブランドイメージの保護や、回収などの余計なコストを回避することにつながります。
回収した製品を再生利用するための体制が整うことで、自社製品を「よりリサイクルしやすい設計」へと改良するモチベーションにつながります。結果として環境に優しい、持続可能性に配慮した製品を生み出すことになります。
広域認定制度は「製造事業者(メーカー)」と「排出業者(ユーザー)」の双方にメリットがある制度です。
製品を購入するユーザーは、通常は廃棄時に自分で処理業者を探し、委託契約を結んでマニュフェスト(産業廃棄物管理票)を交付しなければなりません。しかし広域認定を受けているメーカーから購入する場合、廃棄物の回収から処理までメーカー側に任せることが可能です。この場合、マニュフェストの交付も免除されます。
広域認定制度は「製造事業者(メーカー)」と「排出業者(ユーザー)」の双方にメリットがある制度です。
広域認定制度に有効期限はありませんが、以下の内容に変更があった場合は「10日以内」に変更届か廃止届を提出しなければなりません。
変更届を提出した場合、新しい認定証が交付されます。なお提出が大幅に遅れた場合は認定が取り消される可能性もあるため要注意です。
認定取消しのリスクを避けるためにも、申請時だけでなく認定後も担当者を適切に配置・教育して、認定業者としての責任をきちんと果たしていかなくてはなりません。
廃棄物処理法の特例である広域認定制度は製造業者にとっても、廃棄物の排出業者にとってもメリットがあり、地球環境に維持や美化にも貢献する制度です。ぜひ自社や顧客のため、また社会のために制度の活用を検討してみてください。