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産業廃棄物処理の流れと方法は?
マニフェスト制度や許可制度についても解説
すべての事業者には、自分が出した排出物を処理する責任があります。この記事では産業廃棄物の処理の流れや、産業廃棄物の処理に欠かせないマニフェスト制度について解説していきます。
産業廃棄物は自然環境や住環境、人体の健康に悪影響を及ぼすものです。このため「好き勝手に処分」することは許されません。ここではまず、廃棄物処理法の中から産業廃棄物処理の基本原則を確認してみましょう。
廃棄物処理法の第1条と、第3条第2項にはこのように書かれています。
本文
(第1条) この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。 |
(第3条第2項) 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに…(以下略)。 |
それぞれの冒頭部分にある「廃棄物の排出を抑制」「減量に努める」というのが、産業廃棄物を含む廃棄物処理の基本原則です。
生活や事業活動を営むうえでゴミ(廃棄物)の発生は避けられませんが、それでもできる限り廃棄物の排出を減らすことが求められています。
廃棄物処理法の第3条第1項と、第11条第1項にはこう書かれています。
(第3条第1項) 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。 |
(第11条第1項) 事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。 |
廃棄物を出した事業者が「廃棄物を自らの責任において適正に処理」する、あるいは「自ら処理」するというのが、廃棄物処理のもうひとつの基本原則です。
もちろんすべての排出事業者が自社で産業廃棄物処理施設を所有しているわけではありません。このため実際には多くの事業者が、許可を受けた収集運搬業者や処理業者に処理を委託しています。
いずれにしても、すべての排出事業者(そして委託を受けた事業者)は責任を持って、法令で指定された保管基準や運搬基準、処分基準、委託基準を遵守しなくてはなりません。
先ほど引用した廃棄物処理法第1条では、廃棄物の処理方法の流れについて「適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」と表現していました。ここではそれぞれの内容について簡単に説明します。
産業廃棄物が排出されたら、まずは分別と保管を行わなくてはなりません。分別とは文字通り廃棄物の種類(燃え殻や汚泥、ゴムくずや金属くずなど)ごとに分別して、その後の処理に向けて準備することです。この際、分別が難しい廃棄物は「混合廃棄物」としてまとめられます。
分別された産業廃棄物は、処理が行われるまで(もしくは処理のために収集運搬されるまで)保管が必要です。保管場所は廃棄物を囲い込み、廃棄物の重量に十分耐える構造でなくてはなりません。廃棄物の保管場所であることを表示する掲示や、廃棄物の飛散・流出、害獣・害虫の発生を避けるための措置も必要です。
処理の準備が整ったら、保管されている産業廃棄物を収集し、処理場まで運搬します。運搬中の廃棄物が飛散・流出しないよう、また悪臭や騒音・振動で周辺住民に迷惑をかけることがないよう、運搬の際は十分な対策が必要です。
なお外部の収集運搬業者に委託する場合は、都道府県知事から産業廃棄物運搬業の許可を受けている事業者を選ばなくてはなりません。
産業廃棄物の中にリサイクルできるもの(有価物など)がある場合、廃棄物を少しでも減らすために積極的にリサイクル、つまり再生を行います。
再生できない産業廃棄物については、焼却・粉砕・脱水・中和といったさまざまな「中間処理」を経たうえで埋め立てなどの最終処分が行われます。
産業廃棄物の処理方法は、大きく分けて「中間処理」「再生」「最終処分」の3つです。
中間処理とは再生や最終処分に向けた準備工程です。産業廃棄物の種類によってさまざまな中間処理方法がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
廃棄物を燃やして「燃え殻」や「灰」にする処理です。廃棄物の体積や重量を大きく減らすことで、埋め立てなどの処理をしやすくします。
廃棄物を潰したり、砕いたりする処理です。焼却と同様、廃棄物の体積や重量を大きく減らすことで最終処分に貢献します。また素材によっては、粉砕された欠片(チップ)はリサイクル原料となります。
焼却後の燃え殻や灰を高温で溶かす処理です。1,400°以上という高温によって廃棄物の中に残っていた有機物がすべて燃え尽き、ガラス上の無機物へと変化します。無害化されることで埋め立てなどの処理をしやすくなるほか、路盤材などの原料として再利用されることもあります。
汚泥などの廃棄物から水分を取り除く処理です。液状化によって体積と重量が増えた廃棄物を元の状態に戻すことで減量化します。
再生できるもの、できないものを選り分ける処理です。産業廃棄物の形状や状態はさまざまなため、効率的なリサイクルと減量化のためになくてはならない作業といえます。
再生とは(すでに説明している通り)リサイクルのことです。これには大きく分けて、
の3種類があります。
最終処分とは、中間処理後の産業廃棄物を「埋め立て」もしくは「海洋投棄」することです。なお現在では海洋投棄は減りつつあり、代わりに再生(リサイクル)が増えています。
マニフェストは産業廃棄物管理票ともいい、廃棄物の適正な処理を確認するために利用される書類です。
マニフェストはもともと7枚つづり(A・B1・B2・C1・C2・D・E票)の紙媒体で、処理工程に沿って当事者が相互に交付し合っていました。しかし近年は電子処理でマニフェストをやりとりする「電子マニュフェスト」の利用が急増し、2022年までの時点で電子化率は74.2%となっています。
関連記事『廃掃法と廃棄物処理法の違いとは?目的・内容や法改正による変更点について解説』
産業廃棄物の処理工程に沿ったマニフェストの動きは以下の通りです。
紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
排出事業者→収集運搬業者または処分業者 廃棄物の引渡時に「A票以外のすべて」を交付 | 排出事業者→情報処理センター 廃棄物引渡日から3日以内に電子登録 |
紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
収集運搬業者→処分業者 運搬終了時に「すべて(A票以外)」を交付 ↓ 処分業者→収集運搬業者 廃棄物の引受時に「B1票、B2票」を交付 ↓ 収集運搬業者→排出事業者 運搬終了日から10日以内に「B2票」を送付 | 収集運搬業者→情報処理センター 運搬終了日から3日以内に電子登録 |
紙媒体のマニフェスト | 電子マニュフェスト |
処分業者→収集運搬業者 処分終了日から10日以内に「C2票」を送付 & 処分業者→排出事業者 処分終了日から10日以内に「D票」を送付 ※最終処分も同時の場合は「E票」も送付 | 処分業者→情報処理センター 処分終了日から3日以内に電子登録 |
紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
処分業者→排出事業者 処分終了日から10日以内に「E票」を送付 | 処分業者→情報処理センター 処分終了日から3日以内に電子登録 |
紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
排出事業者 運搬終了:A票とB2票を照合 処分(中間処理)終了:A票とD票を照合 最終処分終了:A票とE票を照合 | 排出事業者 情報処理センターからのメールを確認 |
紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
各事業者 手元のマニフェストを5年間保存
排出事業者 都道府県(もしくは政令市)に報告 | 各事業者 マニフェストの保存は不要
排出事業者 都道府県(もしくは政令市)への報告は不要 |
廃棄物処理に必要な許可は、大きく分けて3種類です。
産業廃棄物収集運搬業許可とは、委託を受けて産業廃棄物を収集・運搬するための許可制度です。これには通常の許可に加えて、搬中に荷物の積み下ろしや積替えが認められる「産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)」という許可の2種類があります。
関連記事『産業廃棄物の積替保管許可とは?収集運搬許可との違いと許可取得の難易度を解説』
「15条許可」とは、産業廃棄物処理施設(中間処理施設)の設置に必要な許可です。排出事業者から委託を受ける処理事業者はもちろん、排出事業者が自社で処理施設を建設する場合もこの許可が必要です。
関連記事『産廃廃棄物の中間処理業許可とは?中間処理の種類や許可が必要なケースを解説』
産業廃棄物の処理は排出事業者すべての「責務」です。自社で処理する場合も収集運搬業者や処理業者に委託する場合も、処理の完了まで責任を持つ必要があります。ぜひ今回の記事を参考にして、正しい産業廃棄物処理を行うよう努めてください。