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廃掃法と廃棄物処理法の違いとは?

目的・内容や法改正による変更点について解説

産業廃棄物に関連する法令に「廃掃法」と呼ばれるものがあります。この廃掃法とは、廃棄物処理法とは違うのでしょうか?この記事ではこうした疑問に答えるとともに、廃掃法の内容や近年の改正内容について説明します。

 

廃掃法と廃棄物処理法

結論から先に言ってしまうと「廃掃法」と「廃棄物処理法」は同じものです。ただしどちらも略称で、正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といいます(この記事では以後、「廃棄物処理法」で統一していきます)。

 

廃棄物処理法が制定されたのは1970年です。それまでの「清掃法」という法律を全面改正する形で制定されました。

 

廃棄物処理法(廃掃法)の目的と内容

廃棄物処理法は、私たちの生活にとって非常に身近な法律です。ここではその概要について見ていきましょう。

 

法律の目的

廃棄物処理法の第1条には、この法律の制定目的が書かれています。

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

法律の目的は「生活環境の保全」と「公衆衛生の向上」で、その実現のために「廃棄物の排出を抑制する」「適正な処理を行う」「生活環境を清潔にする」ことを推進するというわけです。

 

主な内容

廃棄物処理法の内容は、おおまかに「廃棄物の定義」と「処理のルール」です。加えて、廃棄物処理のための各種許可制度や違反者への罰則なども設けられています。

 

廃棄物処理業者はもちろん、業務によって廃棄物が発生するすべての事業者(排出事業者)もこの法律の規定に従って廃棄物の削減や処理に務めなくてはなりません。

 
 

廃棄物処理法(廃掃法)の改正について

廃棄物処理法は1970年の制定以来、時代のニーズに合わせて何度も改正を繰り返してきました。特に2000年代以降は改正の頻度が高くなっており、毎年のように改正を繰り返していた時期もあります。

 

具体的な改正年は以下の通りです。

 

  • 1976年
  • 1991年
  • 1997年
  • 2000年
  • 2003年
  • 2004年
  • 2005年
  • 2006年
  • 2010年
  • 2015年(災害対策基本法改正とセットで改正)
  • 2017年

 

ちなみに廃棄物処理法には「廃棄物処理法施行令(正式名称は廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令)」という関連法令があり、こちらもセットで改正が繰り返されています。

 

2017年改正の背景

直近の改正は2017年に行われました。この改正の背景にはいくつかの事情や出来事があります。

 

①食品廃棄物の不正転売事件

 

2017年改正の理由として真っ先に挙げられるのが、2016年に発生した食品廃棄物の不正転売事件です。これは食品メーカーから「冷凍カツ」の廃棄を委託された処理業者が処分を偽装して、実際には他の業者に転売していたという事案でした。大きな社会問題となったこの事件は、「マニフェストの虚偽報告を防止するための仕組みづくり」という形で改正法に反映されています。

 

②有害物質を含む電子機器類のずさんな管理

 

鉛などの有害物質を含む電子機器の廃棄物は、中間処理を経たうえで最終処分しなければなりません。しかし近年では最終処分前の状態(雑品スクラップ)のまま放置される廃棄物が増え、火災や有害物質漏出の原因となっていることが問題視されてきました。このことも2017年改正の背景となっています。

 

③環境保全に向けた世界の動き

 

近年、地球温暖化やマイクロプラスチックによる海洋汚染などが国際的な課題として注目を集めています。世界中の国々がさまざまな取り組みを進める中で、日本としてもCO2の排出削減や廃棄物の排出抑制を率先して行わなくてはなりません。そのための手段のひとつが2017年の廃棄物処理法改正です。

 

変更点:マニフェスト制度

排出された産業廃棄物は、適正な処理をするために分別し、処理を開始するまで適切な方法で保管しなければなりません。

 

変更点:違反者に対する対処

産業廃棄物処理の許可を取り消された事業者に対して、行政が指導や命令を行えるようになったことも2017年改正のポイントです。

 

従来は許可の取り消しを受けた事業者による「廃棄物処理法違反の状態」を解消できないというケースが発生していましたが、法改正により必要な是正命令等を出せるようになり、事業者が従わない場合は行政が強制的に産業廃棄物の処理を行うことができるようになりました。

 
 

変更点:有害使用済機器の適正保管

別のポイントは、有害物質を含む電子機器等の「雑品スクラップ」の取り扱いに関するものです。

 

従来の問題についてはすでに説明した通りですが、改正法では雑品スクラップの保管や処分を行う事業者に「届出義務」が課されることになりました。これにより、不適切な保管や処分が行われた場合に行政が立入検査を行ったり、是正命令等を出せるようになります。

 
 

廃棄物処理法(廃掃法)の許可制度

廃棄物処理法には大きく分けて「3つの許可制度」が設けられています。

 

①産業廃棄物収集運搬業許可

産業廃棄物収集運搬業許可とは、委託を受けて産業廃棄物を収集・運搬するための許可制度です。これには通常の許可に加えて、搬中に荷物の積み下ろしや積替えが認められる「産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)」という許可の2種類があります。

 

関連記事『産業廃棄物の積替保管許可とは?収集運搬許可との違いと許可取得の難易度を解説

 
 

②産業廃棄物処理業許可(14条許可)

「15条許可」とは、産業廃棄物処理施設(中間処理施設)の設置に必要な許可です。排出事業者から委託を受ける処理事業者はもちろん、排出事業者が自社で処理施設を建設する場合もこの許可が必要です。

 

関連記事『産廃廃棄物の中間処理業許可とは?中間処理の種類や許可が必要なケースを解説

 

③産業廃棄物処理施設設置許可(15条許可)

廃棄物処理法第15条に基づく「15条許可」は、産業廃棄物処理施設(中間処理施設)の設置に必要な許可です。委託を受けて処理を行う事業者はもちろん、排出事業者が自社で処理施設を建設する場合もこの許可が必要です。

 

関連記事『産廃廃棄物の中間処理業許可とは?中間処理の種類や許可が必要なケースを解説

 

廃棄物処理法(廃掃法)の罰則

廃棄物処理法では、違反行為に対して以下のようにさまざまな罰則が用意されています。

 

  • 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科(第25条)
  • 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科(第26条)
  • 2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はその併科(第27条)
  • 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第27条の2)
  • 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第28条)
  • 6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金(第29条)
  • 30万円以下の罰金(第30条)
  • 法人に対する罰則(第32条)
  • 20万円以下の過料(第33条)
  • 10万円以下の過料(第34条)

 

それぞれの罰則が適用される違反行為については『廃棄物処理法違反になるのはどんな行為?罰則や対策についても解説』をご覧ください。

 

 

まとめ

廃棄物処理法は廃棄物処理のルールが記載された重要な法律です。一方で廃棄物処理法は時代の変化に合わせて頻繁に改正を繰り返しているため、廃棄物の排出事業者や処理事業者は常に最新の情報にアンテナを張っておかなくてはなりません。必要に応じて専門家(行政書士)を上手に活用しながら、産業廃棄物を適正に処理を目指していきましょう。

 

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