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産業廃棄物の積替保管許可とは?

収集運搬許可との違いと許可取得の難易度を解説

産業廃棄物を中間処理施設に運ぶ際、保管施設などでいったん降ろすことがあります。このような場合は「積替保管許可」が必要です。この記事では積替保管許可制度の概要と取得の要件について解説していきます。

 

産業廃棄物の積替保管許可制度について

産業廃棄物の運搬では、排出された場所から中間処理施設まで直行するのが原則です。日付をまたがずその日のうちに運搬するのが理想ですが、少なくとも運搬途中で積荷(産業廃棄物)を降ろしたり、一部の積荷を抜き取ったりすることはできません。

 

しかし産業廃棄物の排出場所と中間処理場の立地(距離)や収集する産業廃棄物の量、収集のタイミングなどによっては、運搬途中の産業廃棄物を自社の保管場所に一時的に降ろしたり、別の車に積み替えたりするケースもあります。

 

このような場合に利用されるのが「積替保管許可制度」です。

 
 

収集運搬許可との関係

積替保管許可制度は、実は収集運搬許可(産業廃棄物収集運搬業)の一種です。もし上に挙げたような事情があるなら、通常の産業廃棄物収集運搬業ではなく「産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)」を取得しなければなりません。

 
・産業廃棄物収集運搬業の種類
名称 許可の内容
産業廃棄物収集運搬業(積替保管なし)
  • 産業廃棄物の排出場所で積み込みを行う
  • 産業廃棄物の処理施設で積荷を降ろす
産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)
  • 産業廃棄物の排出場所で積み込みを行う
  • 自社の保管施設などで積荷を一時保管する
  • 積荷の産業廃棄物を別の車に積み替える
  • 産業廃棄物の処理施設で積荷を降ろす
 

積替保管許可を受けるメリット

収取運搬業者が積替保管許可を受ければ、さまざまなメリットが得られます。

 

①運搬効率が上がる

 

すでに説明した通り、産業廃棄物は排出場所から処理場まで直行するのが原則です。ただし処理場が排出場所から遠い場合、ほんの少し廃棄物が出るたびに長距離移動していたのでは効率が良くありません。もし積替保管許可があれば、廃棄物の量がある程度まとまるまで仮保管しておくことで運搬効率を上げることができます。

 

②コスト削減になる

 

車を走らせる距離や回数が減れば、それだけ燃料代や運転手の人件費を削減できます。これは収取運搬業者にとって大きなメリットといえるでしょう。

 

③CO2の排出を減らす

 

車の走行距離・走行時間を減らすことで、CO2を含む排気ガスの排出も減らせます。業種を問わずSDGsが注目される今、地球環境に優しい行動は会社のイメージ向上にもつながるはずです。

 

④資源の有効活用

 

積替保管許可があれば、積荷の産業廃棄物から「有価物」を抜き取ることができます。抜き取った有価物をリサイクル業者に売却すれば資源の有効活用につながるでしょう。

 

デメリットはある?

積替保管許可を受けて収集運搬する場合、複数の排出事業者から収集した産業廃棄物が混ざり合うおそれがあります。結果として産業廃棄物の責任の所在(各排出事業者の責任)があいまいになってしまうことが、積替保管許可制度のデメリットといえるでしょう。

 

また積替保管許可を受けるための施設(積替保管施設)を設置するには自治体との打ち合わせや周辺住民の同意といった手続きが必要です。一般的な収集運搬許可よりも許可取得の負担が大きいこともデメリットといえます。

 
 

積替保管許可が必要なケース

積替保管許可が必要かどうかは、「運搬行為の連続性」や運搬中の行動によって判断します。

 

運搬行為の連続性

運搬行為の連続性とは、産業廃棄物を排出場所で積み込んでから処理施設で降ろすまでの行為が「連続」して行われているかどうかです。もし排出場所から処理施設まで直行するのであれば積替保管許可は必要ありません。

 

一方、運搬行為が中断される場合は注意が必要です。

 

まず運転手が途中で短時間「休憩」したり、運転手が「交代」する程度であれば積替保管許可は必要ありません。一方、運搬中の産業廃棄物を自社の保管場所でいったん降ろしたり、別の車に積み替える場合は積替保管許可の対象となります。

 

「夕方に排出事業者から収集し、一晩休憩したあと翌朝に処分場に降ろす」といった具合に、日をまたぐ場合については意見が別れていますが、単に休息をとる程度の内容であれば問題ないという意見が一般的です。

 
 

手作業による選別

運搬中の産業廃棄物を「手作業で選別」する場合、積替保管許可が必要です。車からいったん降ろして選別するのはもちろん、車の荷台で選別する場合も同様です。

 

ただし機械で選別作業を行う場合は産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)ではなく、中間処理業許可が必要です。

 

関連記事『産廃廃棄物の中間処理業許可とは?中間処理の種類や許可が必要なケースを解説

 

有価物の抜き取り

運搬中の産業廃棄物から「有価物の抜き取り」をする場合も積替保管許可が必要です。有価物を抜き取った後は、マニフェストの「有価物拾集量」欄に抜き取った有価物の量を記載します。

 

積替保管許可に求められる要件

積替保管許可の取得に求められる要件は以下の通りです(自治体によって基準が異なることがあるため、申請の際は必ず事前に確認してください)。

 

①基本となる要件

  • あらかじめ、積替えを行った後の運搬先が定められていること
  • 搬入された産業廃棄物の量が、積替え場所において適切に保管できる量を超えないこと(1日当たりの平均搬出量×7)
  • 搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること
 

②施設に囲いを設ける

部外者の立入防止のため、原則として以下の基準を満たした囲いを設けます。廃棄物の負荷が囲いに直接かかる場合は構造耐力上安全であることが必要です(密閉倉庫型の建物内で積替保管をする場合、囲いは必要ありません)。

 

  • 高さは3m程度
  • 材質は鋼板またはブロック
  • 施錠できる門扉などを設置
 
 

③施設に掲示板を設ける

保管場所の見やすい場所に、以下の基準を満たす掲示板を設置します。掲示板のサイズはタテ・ヨコ縦60cm×横60cm以上で、以下の事項を表示する必要があります。

  • 産業廃棄物の積替保管場所である旨
  • 保管する廃棄物の種類
  • 保管場所の管理者の氏名または名称、連絡先(管理担当部署名、電話番号)
  • 屋外で容器を用いずに保管する場合は、最大保管高
 

④施設に飛散・流出・浸透・悪臭の防止措置をとる

産業廃棄物が周辺環境を汚染しないよう、以下のような措置を行います。

 
  • 床面はアスファルトやコンクリートなど、不透水性の構造であること
  • 排水溝など汚水の流出を防ぐ設備を設けること

⑤施設に管理事務所を設ける

施設の敷地内に、常駐可能な管理事務所を設置します。

 

⑥施設に害獣・害虫の発生防止措置をとる

保管場所にネズミや蚊、ハエ、その他の害虫が生息したり発生したりしないよう予防が必要です。

 

産業廃棄物の積替保管許可取得の流れ

積替保管許可の取得手順は自治体によって決められています。ここでは一般的な許可取得の流れを説明します。

 

①自治体への事前相談

産業廃棄物の種類や積替保管方法をまとめて、申請先の自治体と事前相談を行います。

 

②事前計画書の作成・提出

相談結果に基づいて事前計画書を作成して、それを提出します。事前計画書の内容は以下の通りです。

 
  • 保管積替施設の概要(保管場所や排水溝の有無、施設の広さなど)
  • 廃棄物を保管する容器の図やカタログなど
  • 施設の清掃及び生活環境の保全対策についての説明書
  • 事前計画書の添付書類

 

以下は添付書類の一例です。

 
  • 施設の所有権限を証する書類(土地、建物の登記事項証明書 賃貸借契約書 公図など)
  • 関係法令に関する書類(建築基準法、消防法、火災予防条例、労働安全衛生法、クレーン等安全規則等に関わる書類など)
  • 施設近隣住民への説明内容に関する書類(住民説明会で配布した資料、説明会の経緯を説明する書類など)
 

 

③事前計画書の審査

事前計画書の審査を受けます。問題がなければ施設や容器の設置工事を行います。

 

④現地調査

施設や容器の設置が完了した時点で現地調査を行います。

 

⑤許可申請書の作成・提出

現地調査の結果に問題がなければ許可申請書の作成・提出を行います。

 

⑥審査〜許可証の交付

許可申請書の審査が行われ、内容に問題がなければ許可証が交付されます。

 

まとめ

産業廃棄物の積替保管許可制度は、事業者にとっても地球環境にとってもメリットのある制度です。申請手続きは半年〜2年程度と長丁場ですが、自治体と相談しながら許可取得に取り組んでみてください。

 

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