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生活環境影響調査の目的とは?

調査項目や調査の流れについても解説

産業廃棄物を処理する際は、周辺住民の生活環境への十分な配慮が必要です。この記事では廃棄物処理施設の許可申請にともなう「生活環境影響調査」について、調査の内容や流れについて説明していきます。

 

生活環境影響調査について

生活環境影響調査は、廃棄物処理施設の新規設置や変更申請の際に義務付けられた重要なプロセスです。申請手続きに生活環境影響調査が必要とされる根拠は「廃棄物処理業法」の中にあります。

 

廃棄物処理業法第15条第3項前半

前項の申請書には、環境省令で定めるところにより、当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。
 

この条文にある通り、廃棄物処理施設を設置しようとする事業者は生活環境影響調査を行い、「調査の結果を記載した書類」を申請書に添付しなければなりません。

 

調査の概要

生活環境調査では設置を計画している施設の処理能力から「施設の稼働」や「廃棄物の搬入・搬出・保管」が周辺環境に与える影響を予測・分析して対策を検討し、それに基づいた現地調査を行います。

 

調査対象となる施設や調査事項についてはあらかじめ指定されていますが、事業内容や自治体によって多少異なることもあるため注意が必要です。

 
 

調査の目的

生活環境調査の目的は「公害や自然破壊の防止」です。高度経済成長時代の日本では、急速な工業化にともなう大規模な公害被害が相次ぎました。また各地で自然破壊が行われ、住環境の悪化や災害発生の要因ともなっています。こうした被害を繰り返さないための取り組みとして制度化されたのが「生活環境調査の義務化」というわけです。

 

加えて生活環境調査には、施設設置に対する周辺住民の理解を得やすくする目的もあります。環境汚染につながりかねない廃棄物処理施設は「迷惑施設」のひとつとされ、設置反対の住民運動が発生することも少なくありません。適正に行われる生活環境影響調査は、こうした周辺住民の心情を和らげる上で効果的です。

 

他の環境アセスメントとの違い

なお生活環境影響調査は実務上、「生活アセス」や「ミニアセス」と呼ばれることもあります。同様に「◯◯アセス」と呼ばれる調査は他にもあるため、これらの違いについて簡単に説明しましょう。

 

一般に「アセスメント(アセス)」とは客観的な評価や分析を意味します。たとえば「環境アセスメント」という場合、各種の開発事業が環境に与える影響を評価・分析するという意味です。

 

生活環境調査(=生活アセス/ミニアセス)も、この環境アセスメントの一種です。そして環境アセスメントには他に「法令アセス(法アセス)」「条例アセス」「自主アセス」と呼ばれるものもあります。これらのおおまかな違いは以下の通りです。

 
アセスメントの俗称 根拠 対象
生活環境調査・生活アセス・ミニアセス 廃棄物処理法に基づいて実施 廃棄物処理施設(中間処理施設)
法令アセス・法アセス 環境影響評価法(アセス法)の規定により、国の法令に基づいて実施 廃棄物処理施設(中間処理施設)
条例アセス 環境影響評価法(アセス法)の規定により、自治体の条例に基づいて実施 小規模な開発事業
自主アセス 法令や条例に基づかず、事業者が自主的に実施 法令や条例で調査が義務付けられていない開発事業
 
 

生活環境影響調の対象施設

なし生活環境調査の対象となるのは廃棄物処理施設です。これには「一般廃棄物処理施設」と「産業廃棄物処理施設」が含まれます。

 

一般廃棄物処理

  施設 条件
1 ごみ処理施設 5t/日を超えるもの
2 ごみ焼却場

200kg/時以上のもの

又は火格子面積が2㎡以上のもの

3 一般廃棄物の最終処分場 すべて
 

産業廃棄物処理施設

  施設 条件
1 汚泥の脱水施設 10㎥/日を超えるもの
2 汚泥の乾燥施設

10㎥/日を超えるもの

3 汚泥の天日乾燥施設 100㎥/日を超えるもの
4 汚泥の焼却施設

5㎥/日を超えるもの

又は200kg/時以上のもの

又は火格子面積が2㎡以上のもの

5 廃油の油水分離施設 10㎥/日を超えるもの
6 廃油の焼却施設

1㎥/日を超えるもの

又は200kg/時以上のもの

又は火格子面積が2㎡以上のもの

7 廃酸又は廃アルカリの中和施設 50㎥/日を超えるもの
8 廃プラスチック類の破砕施設 5t/日を超えるもの
9 廃プラスチック類の焼却施設

100kg/日を超えるもの

又は火格子面積が2㎡以上のもの

10 木くず又はがれき類の破砕施設 5t/日を超えるもの
11 有害物質を含む汚泥のコンクリート固型化施設 なし
12 水銀又はその化合物を含む汚泥のばい焼施設 なし
13 廃水銀等の硫化施設 なし
14 汚泥、廃酸又は廃アルカリに含まれるシアン化合物の分解施設 なし
15 廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の溶融施設 なし
16 廃PCB等、PCB汚染物又はPCB処理物の焼却施設 なし
17 廃PCB等又はPCB処理物の分解施設 なし
18 PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設又は分離施設 なし
19 産業廃棄物の焼却施設(汚泥、廃油、廃プラスチック類及び廃PCB等、PCB汚染物又はPCB処理物の焼却施設を除く。)

200kg/時以上のもの

又は火格子面積が2㎡以上のもの

20

産業廃棄物の最終処分場

イ)遮断型最終処分場

ロ)安定型最終処分場(水面埋立地を除く)

ハ)管理型最終処分場

なし

 

生活環境影響調の調査項目

生活環境調査では「大気質・水質・騒音・振動・悪臭」が調査項目となります。ただし具体的な調査項目は施設の種類ごとに設定されており、さらに自治体によって独自の調査項目が設定されていることもあります。

焼却施設の調査項目

大気質
  • 二酸化硫黄(SO2)
  • 二酸化窒素(NO2)
  • 浮遊粒子状物質(SPM)
  • 塩化水素(HCI)
  • ダイオキシン類
  • その他必要な項目
水質
  • 生物化学的酸素要求量(BOD)/科学的酸素要求量(COD)
  • 浮遊物質量(SS)
  • ダイオキシン類
  • その他必要な項目
騒音
  • 騒音レベル
振動
  • 振動レベル
悪臭
  • 特定悪臭物質濃度または臭気指数(臭気濃度)
 

破砕・選別施設の調査項目

大気質
  • 粉じん
  • 二酸化窒素(NO2)
  • 浮遊粒子状物質(SPM)
水質
  • 生物化学的酸素要求量(BOD)/科学的酸素要求量(COD)
  • 浮遊物質量(SS)
  • その他必要な項目
騒音
  • 騒音レベル
振動
  • 振動レベル
悪臭
  • 特定悪臭物質濃度または臭気指数(臭気濃度)

最終処分場の調査項目

大気質
  • 粉じん
  • 二酸化窒素(NO2)
  • 浮遊粒子状物質(SPM)
  • その他必要な項目
水質
  • 生物化学的酸素要求量(BOD)/科学的酸素要求量(COD)
  • 全りん(T-P)
  • 全窒素(T-N)
  • ダイオキシン類
  • 浮遊物質量(SS)
  • その他必要な項目
  • 地下水の流れ
 
振動
  • 振動レベル
騒音
  • 騒音レベル
悪臭
  • 特定悪臭物質濃度または臭気指数(臭気濃度)
 
 

生活環境影響調査の流れ

生活環境調査の流れは自治体によって多少異なりますが、ここでは一般的な流れを紹介します。

 

①調査項目の整理・調査地域の設定

まずは事業計画や廃棄物処理施設の種類、地域の特性などから影響を受ける項目(大気質や水質など)を整理し、調査対象となる地域を絞り込みます。

 
 

②現状把握・影響予測

①で選定した項目や地域について資料による調査や現地調査を行い、一般的な予測手法で生活環境への影響を予測します。

 

③生活環境影響調査計画書の作成

許可更新は「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」の受講が必須です。講習会の有効期限(新規の講習会は5年、更新講習会は2年)が過ぎている場合は公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターのホームページでスケジュールを確認して、許可更新に間に合うように受講してください。

 

②更新申請書類を提出する

更新申請に必要な書類をすべて集め、必ず「有効期限内」に提出します。提出先は新規申請のときと同じです。更新申請書類を提出する際は、講習会の修了証も提示します。

 

③新しい許可証の交付

②に基づいて「生活環境影響調査計画書」を作成し、自治体との事前協議書とともに提出します。

 
 

④現地での実測調査と分析

①②③を前提として実測調査を行い、調査結果を分析します。

 

⑤生活環境影響調査調査書の作成

④の調査結果をとりまとめて「生活環境影響調査調査書」を作成し、廃棄物処理施設の設置許可や変更許可の申請書とともに提出します。

 

まとめ

廃棄物処理施設の設置申請にともなう生活環境調査は、自然環境や住環境の保護・保全はもちろん、事業計画に対する住民理解を得る上でも大切なプロセスです。なお細かな調査項目や調査の流れは地域によって異なる部分も多いため、実際に調査計画を立てたり調査を実施する際には、自治体としっかり協議するようにしてください。

 

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